読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

チョコビの徒然草

企業法務弁護士(仮)。企業分析、スタートアップ分析、法制度、脳科学、オススメの本について徒然なるままに書いていこうと思い

クックパッドはもう、何もしなくていい!?

初めまして!企業法務弁護士志望のチョコビです!

 

今回はクックパッドを題材として、成熟企業のあり方について考えてみようと思います。

昨年、穐田社長と創業者の佐野氏のお家騒動があったことから、僕にとってはコーポレートガバナンスの意味でも興味深い企業ですが、今回は経営戦略をメインに考察してみようと思います。

まず、クックパッドの決算資料、有価証券報告書はこちら↓

https://cf.cpcdn.com/info/assets/wp-content/uploads/20170316210147/2016Q4jp.pdf

 

https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/E01EW/download?uji.verb=W0EZA104CXP001003Action&uji.bean=ee.bean.parent.EECommonSearchBean&PID=W1E63011&SESSIONKEY=1493449621001&lgKbn=2&pkbn=0&skbn=1&dskb=&askb=&dflg=0&iflg=0&preId=1&mul=クックパッド&fls=on&cal=1&era=H&yer=&mon=&pfs=4&row=100&idx=0&str=&kbn=1&flg=&syoruiKanriNo=&s=S1009XJW

 

決算資料をざっと要約すると、売上170億円のうち、会員事業が50%、告事業30%でその他20%、営業利益50億で営業利益率30%であり、海外事業の減損を除けば堅実に成長している企業といえます。

月額の会員費が280円(アプリでは400円)と少額ですが、180万人も使えばこれだけの収益になるというのは簡単な算数ですが面白いですね。

穐田前社長が教育や家計簿など、ユーザーの生活全般に関わっていく方針でしたが、佐野社長に代わって原点であるクックパッド以外の非中核部門を売却し、料理レシピ事業に集中する方針を打ち出しました。

 

今回は自分が佐野社長の立場になったとして、クックパッドを今後どのように経営していくべきか考えてみようと思います。

まず選択肢としては

①国内有料会員の増加

②海外展開

③料理に関連した新事業

が思い浮かぶと思います。

 

まず、①について。

利用者数が既に6300万人であることから、有料会員数を増やす余地は残っているものの、その成長率には限界があると思われます。

もっとも、意外なのがアプリ利用者が15%しかおらず、スマートフォンブラウザが60%、PC利用者が20%であることです。

有料会員の料金がアプリの方が120円高いことも理由なのかもしれませんが、アプリの利便性を高めることによって増収を狙う余地はありそうです。特にdドコモと連携したレヴェニューシェア売り上げが近年の成長を支えていることからも、スマホユーザーを以下に取り込んで行けるかが重要になってくると思います。

 

他方、国内の競合としては動画レシピ会社のkurashiruが存在します。たまに僕も料理した際によく思うのが、料理する過程で以下に完成形を思い浮かべられるか?が非常に重要で、その点で今後のユーザー増加率でいえばkurashiruに軍配が上がるように思われます(実際に僕はいつもkurashiruの方を使ってます)。

クックパッドには150億円近くのキャッシュがあるため、それを使って国内の競合企業を買収することも十分に考えられますが、既存のレシピデータとのシナジーを生み出しにくいため、自社内にある既存のレシピデータのうち人気のあるものを動画化するのと変わらないと思われます。

広告収入もユーザー数が増えない以上大幅な増加は見込めません。

結論としては、国内事業での増収余地はあるものの、現在の150億円から増えたとしても200億円程度ではないでしょうか。

 

次に、②について。

下記、決算説明会での質疑応答にある通り、佐野社長は5年後に100か国でNO.1の料理レシピサービスを作ることを目指しており、まずはユーザー獲得を優先させて積極的にM&Aをしていく方針のようです。

https://cf.cpcdn.com/info/assets/wp-content/uploads/20160810174942/1Hqa.pdf

しかし、今期の35億円の減損からわかる通り、短期的には相当のリスクを伴う上、海外でも競合が多数存在します。

クックパッドの海外展開については下記のブログで詳しく考察されています。

確かに国内事業が頭打ちである以上、海外進出を目指すのは合理的といえます。

しかし、素人ながらに思うのは、食文化という地域特殊性の高い業界において、グローバル展開することはサービスの性質的に難しいのではないか?ということです。

まず、言語の障壁があることから、必然的に言語ごとに異なるサービスを立ち上げる必要があります。アラビア語のレシピを読まされてもでも全く分からないですよね(笑)。facebookuberとは勝手が違うわけです。

また、確かにベトナム料理やタイ料理のレシピを翻訳したり、動画サービスにするなどして日本人でも作れるようになれば面白いですが、そこに強いニーズがあるかは正直微妙だと思います。食材や調理器具を考えるとベトナム料理店やタイ料理店に行った方が早いし本格的なので(笑)。つまり、国内産業とのシナジー性はほとんどありません。

クックパッドが素人による料理レシピの投稿に付加価値をつけるサービスと定義させていただくと、言語、食文化の違いというグローバル展開する必然性はないわけです。

もちろんクックパッドにはレシピサイトに関する技術的優位性はありますが、ユーザー数が最重要である料理投稿サービスにおいて、言語や企業文化というディスアドバンテージを背負ってまで、競合と戦うの負けるリスクの方が高いと思われます。

競合が少なく勝てる見込みの高い数か国NO.1を目指すならまだしも、佐野社長の100か国でNO.1を目指すという目標は過大過ぎであり、過大なM&Aによる減損リスクが大きいと言えます。

コア事業である料理レシピサービスにおいこそ、進出先において選択と集中を行う必要があります。

 

最後に③について。

クックパッド料理教室や人気レシピの商品化など、料理に関連する新規事業を立ち上げています。個々の新規事業についての詳細は省きますが、僕としては成長戦略としてはこちらが王道である考えます。

特に海外展開によって得られたレシピデータをもとに、本格的な外国料理店やコンビニ等とコラボした外国料理の商品化はシナジー効果が高そうです。

コアユーザーの食事データを人工知能によって解析してヘルスケアに生かしたりもできるかもしれませんね(笑)。

 

以上をまとめると僕がクックパッドの社長であると仮定した場合、成長戦略としては

・アプリ利便性向上、宣伝強化による単価の向上

・海外事業の選択と集中

・新規事業の立ち上げ

の3本柱で戦略を取ります。

 

以上、僕なりに頭をひねってクックパッドの成長戦略を考えてみたのですが、力不足のため良い絵を描くことはできませんでした。。

 

 

しかし、考えられる選択肢を検討し尽くして、ふと思い至った結論が、、

 

これ以上、成長する必要はないんじゃないか???

 

というものです。

 

企業は成長し続ける必要があって、特にIT系だと高い成長率を投資家は求がちですが、クックパッドは今の時点で年商150億円、営業利益50億円の大企業であり、もはやITベンチャーではなく成熟企業です。

月額課金制のサービスであって、かつ膨大なレシピデータを有しているため、世界でもトップシェアを誇っている今の地位が一瞬にして崩れ去ることはあり得ません。

現在は広告費が0.8億円と売上高に対して0.4%しか占めていないため、広告費にキャッシュを投入することによって、KURASHIRU等の競合が存在する国内事業においても相対的にポジションを保持できると見込めます。 

つまり、成長戦略ではなく防衛戦略にこそ、いまのクックパッドのリソースを割くべきです。

 

極論を言えば何もしなくても会員料金と広告料が入ってくるわけですから、広告費を増加させることによる現状維持とコスト削減に注力する。そのうえで人的に余力がある範囲で新規事業を展開するのがよいのではないでしょうか。

 

それでは余ったお金は何に使うのか?

 

弁護士的な答えを言わせていただけば、”株主還元”です。

 

次々回あたりに"株主価値最大化原理"についてご紹介しようと思っておりますが、所有と経営の分離を基本原理とする株式会社制度において、経営者は株主価値を最大化するよう努める法的義務を負っています。なぜなら、そのように株式会社制度を整備することによって、そのような法的義務がない社会よりも経済効率性が高い社会が実現することが理論的にも歴史的にも(ほぼ)証明されているされているからです。

特に、海外での過剰なM&Aは失敗して株主価値を毀損するリスクが高いことから、そのような経営判断をするべきではありません。

 

クックパッドの場合は多くの上場会社の異なり、佐野社長が43.4%の株式を有するいわゆるオーナー企業であるため、株主によるガバナンスが効かないことが、過剰なM&Aを止められない理由であり、オーナー経営の弊害が露呈しているといえるかもしれません。

 

昨年度は海外事業の減損のため一株当たりの配当が10円のまま維持されており、またお家騒動の結果株価は2017年4月29日時点で890円と1年間で半分にまで落ち込んでいます。

これは非中核部門を売却して料理レシピサービスのグローバル展開を掲げる佐野社長の方針を株式市場が評価していないといえます。

 

僕がクックパッドの社長であれば、防衛戦略に加えて、株主優待サービスや配当の増加によって安定株主を創出しつつ、保有しているキャッシュで自己株式取得を行います。

そうやって株主に利益を還元するのが成熟企業としての一つのあるべき姿であると考えているからです。

 

オーナー経営、自己株式の取得のメリット&デメリットについても、将来的に考察したいと思います。